エビンルード船外機 ロワーユニット交換

エビンルード船外機 エンジン

エビンルード船外機、イントルーダー175 のロワーユニットを交換いたしました。
依頼主は、河口湖でレンタルボート・駐艇業務等を行っている「ボートハウスさかなや」さんからで、その対象艇はバスボート「ハイドラスポーツ LS180 DC」18ft のレンタルボートとなります。

事の発端は…
「シフトが動きません!」(ギアが入らない…)との事でした。
さあ、先ずは確認から…。


はい!
ギアケースが割れております!
こちらは下側。


見事に割れております。
こちらは上側。


解説(小話し)
さあ… では一体何故この様な割れ方をしたのでしょうか?
ぶつけた!と、多くの方は思います。 が、多分違うでしょう!?

以下、私の推測です。
ギアケース内部への水の混入… しかも多量の水。
どこかのシールから、じわりじわりと長時間かけての浸水ですね。
このパターンによるケースの割れですが、私の知る限り3例目です。
しかも河口湖… そして冬…
どうして?どうして?
本来ならばギアオイルで満たされているケース内部に、シール部分から水が混入… そして、その水が氷点下にて凍結… 膨張… 力の逃げ場を求め、その膨張力によりケースを破壊!
これが私の推測です。

今回の場合は、膨張した氷がベアリングハウジングを外側に押し、ハウジングを止めているボルト部分がクラックしました。
メーカーやモデルによって、ウィークポイントが異なる様で、別の部分が割れた例も有ります。

では、どうすれば良いですか!?
答えは簡単! 定期的なギアオイル交換です。
定期的にギアオイル交換を行っていれば、水の混入状況が確認出来ます。
そして、万が一ギアケース内に水が混入していたとしても、ギアオイル交換と同時に、その混入の原因の元となっているシールの交換を行えば良いだけの事です。
特に寒冷地においては、冬期格納整備時にギアオイルを交換する事は有効な対策となります。
オイルは凍りませんからね。


ロワーユニットの金額って…???
ロワーユニット(アッセンブリ)ってとても高額なのです!
今回のエンジンは、アメリカ製のエビンルード船外機。同じ OMC 系列のジョンソン船外機と同様に、既に製造メーカーが無く、引き継いだボンバルディア社からの部品の供給も間もなく打ち切り…。
部品が有ったとしてもその価格は? きっとかなり高額なのでしょう!?(\800,000- 前後? もっとかな?)
参考の為に、同じ2ストローク 175馬力付近のヤマハ船外機とマーキュリー船外機のロワーユニットアッセンブリの金額を調べてみました。
ヤマハ 150G(VMAX): \286,000-
ヤマハ 200G(VMAX): \341,000-
マーキュリー V6: ケースのみで \300,000- 以上(内部ギア等を含む、アッセンブリ設定なし)
マーキュリーの90馬力ではアッセンブリの設定が有りましたが \500,000- 以上でした。
ロワーユニット(ギアケース)って絶対に壊せないですよね!

その高額なロワーユニット…
しかも既にメーカーが存在しないエビンルード船外機の「中古のロワーユニット」を、エビンルード船外機に精通している霞ケ浦の「マリンワークス」さんより手配して頂きました。
ありがたいお話しです!


霞ケ浦の「マリンワークス」さんより、中古のロワーユニットアッセンブリ(ギアケースアッセンブリ)が届きました。


専用スタンドにセットして整備開始です。
元々問題なく使用していた物と言う事ですので、今回はギアケース内部の分解整備は行わず、インペラと周辺部品のみ交換いたしました。


一旦、ウォーターポンプハウジングを分解します。


古いエンジンを整備する時のお助けアイテム。
パーフェクトシールです。


そのパーフェクトシールは水漏れをヘルプしてくれる優れ物!
要所要所で活躍します。


ウォーターポンプ下に有る、ベアリングハウジングです。
高速回転をするドライブシャフトに接するオイルシールですので、念の為、新品に交換です。
水が浸入し易い箇所です。


同じくベアリングハウジング。本体ケースに接する部分のO-リングも新品交換します。
この様な部分からも水は侵入してきます。


中古のギアケース…
勿論、新品のインペラに交換をします。


ハイドラスポーツ LS180DC に搭載されている、エビンルードイントルーダー175 に、中古のロアーユニットが組み込まれました。


もし中古のアッセンブリが無かったら…
新品のケースだけでも入手してギアの組替か!?
バックラッシュ調整の為のシムは有るのか???
非現実的ですね。


ギアオイル交換って本当に重要!
そのギアオイル交換時に、水の混入が確認された場合には、速やかに各種シールを交換する事をお勧めします。


余談ではありますが、今回修理を行った河口湖「ボートハウスさかなや」さんのレンタルバスボート「ハイドラスポーツ LS180 DC」には、スポットロック機能を搭載したウルトレックスのエレキと、ガーミンのライブスコープが装備されております。
トレンドのバスフィッシングが体験出来ますので、どうぞお試し下さい。